キジムナーKids
上原正三氏は、1937年沖縄生まれで、金城哲夫氏に誘われて、円谷プロに属して、ウルトラQなどなどのシナリオライターとして活躍された方です。
金城哲夫といえば、円谷プロの特撮映画ウルトラマンシリーズなどの企画を手がけた沖縄の誇る脚本家。
上原正三氏の自伝的小説、キジムナーKidsを読んだ。
ハブジロー、ポーポー、ベーグァ、ハナ(ぼく)の4人の小学生中心に、終戦直後の逞しい子供たちの物語だ。
ハブジローはハブ獲りの名人だ。
ポーポーは、右前腕がないけれど、左手だけで逆立ちだってできる。
ベーグァは、絵を描くのが好きで、山羊と赤いチョウチョだけを書き続け、メーェヘェーとしか言葉を発しない。
ぼくはいつも鼻水がタラタラ流れるのでハナー。
洞窟に住む謎のフリムン軍曹やいつも贅沢品を子供達に気前よくあげる謎の少年サンデー。
だんだんと謎が明らかにされていく。
それぞれの子供達の戦時中の出来事が、次第に語られていく。
胸に迫る出来事に目頭が熱くなる。
悲しくて切なくて、挫折と希望が入り混じり、それでも逞しく生きていくしかなかった少年達。
ウチナーグチもところどころに散りばめられている。
アネ、クヌ、ワランチャー、ヤナワワランチャー
(おっ、このガキ共、悪ガキどもー)
本の下段には、ウチナーグチの説明が添えられている。
小学高学年でも、読める内容で、子供達が、本土の学校では決して教えないだろう沖縄の、あの時代のことを知り、現在の沖縄を理解する助けになるようなこの本はとても良い小説だと思った。
何年先かわからないが、いつかおじいちゃんになって、孫でもできたら、この本を送ろう。
大人も子どもも共有できる世界を描いた優れた作品を選ぶと定められている坪田譲治賞受賞作品です。
2017年6月23日発行
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